“音”の世界から、建築・暮らしを考える

“音”に関わりながら、騒音問題、ピアノ室・音楽室の設計、自然材料に由来する新しい音の材料を開発、音システムの開発など、気が付いたことを記していきます。
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自然・建築・防音
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低周波騒音と調査
*マンションなどの住宅、工場・ビルなどの騒音対策の基本は、音測定で「問題の音」を特定し、「音源」を特定し、分析をすることから始まります。 その結果に基づいて、防音対策プランを作成し、ご提案します。

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信じられない「ピアノ室」、ピアノの音が、下階に伝搬

昨年の暮れ、考えられないことに出会いました。

首都圏のマンション「ピアノ室を造ったが、どうも防音ができていないようだ。何とかできないか?」というご相談を受けました。

早速、現況のピアノ室の防音性能を、調査にうかがいました。

そのピアノ室は、有名なピアノメーカーが造ったピアノ室で、35dBカットとして、販売・施工しているものでした。

 

室内で、低音から高音を一定の音エネルギーにした『ピンク・ノイズ』を発生させ、測定できる、いろいろな箇所で、測定をしてみました。

お使いのピアノは、国産の中では、最も大きな音が出せる、と言われているアップライトピアノでした。

それなので、そのピアノが出すと思われる、ピアノ室・中央で、騒音値、80 dBAくらいのピンク・ノイズの音源で、測定をしました。

 

下のグラフが、その結果です。

アビテックス 遮音性能2

 

ドアから、125〜160Hzの音が漏れていることが分かりました。

測定場所は、ピアノ室に接している、東の廊下・玄関、南の洗面・壁前、北の屋外廊下・窓前、で測定をしました。

隣戸の界壁側は、不可能だったので、諦めました。

お隣からは、特にクレームは出ていない、ということでした。

 

上記の音による、遮音性能は、下記のようになりました。

アビテックス 遮音性能グラフ

このピアノ室の仕様は、『D-35』ということです。

間に既存の壁がある、洗面・壁前はD-31、『D-30』ランク。

ドアの遮音性能がそのまま反映する、廊下・ドア前はD-26、『D-25』ランク。

間に間仕切り壁がある、玄関・壁前はD-17、『D-15』ランク。

屋外である北廊下・窓前は、二重サッシの性能そのものであるはずですが、D-19、『D-20』ランクでした。

 

どれも、仕様『D-35』に達していません

 

それ以上に問題だったのは、聴診器で玄関・床のピアノ音を聴いてみたところ、ピアノの音が、大きな音のまま、伝わっていました。

そこで、学会・基準にはない、『固体伝搬音』の測定をすることにしました。

その結果が、下記のグラフになります。

アビテックス 振動性能グラフ

ピアノの音は、ピアノの脚から伝搬している、と考えられるので、ピアノ室内のピアノの脚の振動、その直下のカーペット、その下のフローリング、を測定してみました。

そして、コンクリート・スラブ直接である、玄関・床、その上にある、床の木下地に接している玄関・幅木の振動・音を測定してみました。

 

その結果、100Hzまでの低周波音が、ほとんど減衰することなく、伝搬していることが、分かりました。

特に玄関・床は、63〜100Hzの低音が、大きく伝わっていました

上記の音による『振動低減性能』は、下記のグラフになります。

アビテックス 振動性能グラフ

室内床、玄関床・幅木ともに、結果はすべて、4000Hzという高い音・振動が良くなく、そこで振動低減性能は、決まっています。

ピアノ室内は、カーペット上がD-10、フローリング上がD-12、ともにD-10ランクでした。

つまり10dBしか、低減していない、ということです。

もっと良くなかったのが、玄関です。

床がD-5、幅木がD-6、ともに室内よりも良くない、D-5ランクでした。

つまり、ほとんど低減していない、ということです。

 

もうひとつ、このレンジは『透過損失』D値のレンジを使いましたが、もっと良くないのは、100Hz以下の低周波音です。

このレンジには、低周波音はありません。

 

総合すると、恐らく下階の室内には、かなりの音が伝搬していたのでは?と考えられます。

何としても、『固体伝搬音』を低減しなければなりません

 

このピアノ室を造るのに、大金を使ってみえるので、なるべくコストは安くしなければなりません。

そこで、遮音性能が良くない場所は、すべて戸内、対外的な箇所は、北廊下・窓だけなので、『空気伝搬音』は目をつぶって、『固体伝搬音』対策を徹底しよう、という考え方にしました。

 

これもコストのことを考えて、既存の床をそのまま使い、その上にスタインウェイ同等の性能と考え、11層の遮音制振層を構築する、というプランをご提案しました。

合計約60万円くらいでした。

 

工事後、下階の方のご了承をいただき、上階のピアノを思い切り弾いていただき、下階の室で測定しました。

その結果は、ほとんど伝搬していませんでした。

騒音計では暗騒音と比べ、一部約5dB程度の盛り上がりはありましたが、測定していて、耳を澄ますと、微かに聴えるかな?くらい、の音で、何時スィッチを押して良いか、分からないくらいでした。

下階の方からも、「これならば、大丈夫ですね」というお墨付きをいただきました。

 

しかし問題は、こういう性能の良くない音楽室を、高い値段で、売っていること

とてもボクには、考えられません。

ピアノ・音楽防音室 | 10:34 | - | - | - | - |

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