都内の賃貸マンションの所有者の方から、「地階にあるダンス教室の音が、6階まで響いて、とてもうるさい」というご相談がありました。
早速うかがって、測定をしてみました。
すると、かなり大きな「ドン」という音が、リズムを取って、響いてきました。
ダンス教室がある地階に下りて、その近くで確認しました。
そのダンス教室は、ヒップ・ホップ系のダンスのようで、流れの中で、全員が足をそろえて、床を打つ「ドン」という、同じ「衝撃音」に間違いありませんでした。
地階のダンスの振動が、コンクリート躯体に伝搬して、何と7階分上にある、6階のその居室に届き、かなり大きい「ドン」という放射音になっていました。
これまでも、折々お話ししてまいりましたが、コンクリートは、空気の約15倍、音をよく伝えます。
こういう現象は、よく経験します。
そのマンションは、前面道路の下を、地下鉄が通っていて、その音・振動もよく聴えます。
しかし、その地下鉄の音以上に、このダンスの音の方が、大きく聴えているのです。
ご参考までに、この6階の居室で測定した音を、グラフにしてみます。
※『暗騒音』=何もない時の、普段の音
高い音は地下鉄音の方が、大きくなっていますが、男性の声とほぼ同じ、250Hz以下の低い音は、ダンスの「ドン」音の方が、
ピーク値で20デシベルくらい、大きくなっています。
音エネルギー量と人の聴感覚は、対数の関係で、10デシベルは2倍に、20デシベルは4倍に聴えます。
それくらい大きな「音」になっていたのです。
賃貸ですので、他の居住者のためにも、ダンス教室の衝撃音を低減するか、無くす対策をしてもらうよう、交渉できるはずです。
しかしこのマンションは、共同所有で、あいにくそのダンス教室は、他の所有者の区分になっていて、その所有者に交渉したもらうしか、解決するための手段がありません。
解決をしてもらうため、ボクが測定調査報告書を作成し、それを基に交渉していただいたようですが、なかなか前に進まないようでした。
丸1年くらい経ったこの夏、その方から、「結局、所有権を売却して、引っ越すことにしました」というご連絡をいただきました。
お聞きすると、そのダンス教室は未だに、引っ越さずに、運営を続けているようだ、とのこと。
お住まいの方は、どうしているのかな?、と思うと、最善の解決ではありません。
残念で、仕方ありません。